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俺はまず、大通りに面したオープンカフェのテラスに陣取る事にした。
ここからなら行き交う人々が良く見えるし、建物や車なども程良く視界に納まる。
なにより、ここのウェイトレスはレベルが高いからな。
「いらっしゃいませー。ご注文はお決まりですかー?」
席に着くと間もなく、ちんちくりんだがくりっとした瞳が可愛らしいウェイトレスが、オーダーを聞きに来た。
うん。やっぱりレベル高けーな、この店。
「ブレンドコーヒー。ブラックで。」
ウェイトレスが可愛いと好きでもないブラックコーヒーを頼んじまうのは俺の悪い癖だが、そんなことはどうでもいい。
とりあえず、この娘で試してみるか。
(透けろ。)
「かしこまりましたー。」
と愛らしいスマイルをくれるウェイトレス。
その制服が徐々に色味を失い、スーッとフェイドアウトするように消えていく。
(なるほど。白のレースか…)
下着に負けないくらいの雪肌をまじまじと拝見しながら、俺は実験を次の段階へと移した。
(戻れ。)
消えていた彼女の制服が、今度は浮かび上がるように現れてくる。
それはまるで実態を持たない蜃気楼のようであり、昔ホラー映画でよくみたゴーストのようでもある。
(止まれ。)
制服のゴーストが彼女の輪郭とマッチしたタイミングで、俺はそう念じた。
すると、俺の読み通り、雪肌と白いレースを露わにしたまま、薄もやのような制服を身に纏ったウェイトレスが完成する。
「ご注文は以上でよろしかったですかー?」
完全スケルトンのウェイトレスに、「ああ。」という返事を返して、俺は実験の結果に満足感を覚えていた。
おもむろに目の前のカフェテーブルを見る。
確かにそれはテーブルだが、くっきりとウッドデッキの床が透けて見えていた。
さらに視線を大通りの方へと移す。
行き交う人々は皆薄もやの衣を纏い、車はエンジンなどの内部構造を透けたボディに包み込み、建物は外壁越しに中の様子が窺える。
つまり、俺の実験は大成功というわけだ。
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