第一章 「透けて視える男」

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俺はまず、大通りに面したオープンカフェのテラスに陣取る事にした。 ここからなら行き交う人々が良く見えるし、建物や車なども程良く視界に納まる。 なにより、ここのウェイトレスはレベルが高いからな。 「いらっしゃいませー。ご注文はお決まりですかー?」 席に着くと間もなく、ちんちくりんだがくりっとした瞳が可愛らしいウェイトレスが、オーダーを聞きに来た。 うん。やっぱりレベル高けーな、この店。 「ブレンドコーヒー。ブラックで。」 ウェイトレスが可愛いと好きでもないブラックコーヒーを頼んじまうのは俺の悪い癖だが、そんなことはどうでもいい。 とりあえず、この娘で試してみるか。 (透けろ。) 「かしこまりましたー。」 と愛らしいスマイルをくれるウェイトレス。 その制服が徐々に色味を失い、スーッとフェイドアウトするように消えていく。 (なるほど。白のレースか…) 下着に負けないくらいの雪肌をまじまじと拝見しながら、俺は実験を次の段階へと移した。 (戻れ。) 消えていた彼女の制服が、今度は浮かび上がるように現れてくる。 それはまるで実態を持たない蜃気楼のようであり、昔ホラー映画でよくみたゴーストのようでもある。 (止まれ。) 制服のゴーストが彼女の輪郭とマッチしたタイミングで、俺はそう念じた。 すると、俺の読み通り、雪肌と白いレースを露わにしたまま、薄もやのような制服を身に纏ったウェイトレスが完成する。 「ご注文は以上でよろしかったですかー?」 完全スケルトンのウェイトレスに、「ああ。」という返事を返して、俺は実験の結果に満足感を覚えていた。 おもむろに目の前のカフェテーブルを見る。 確かにそれはテーブルだが、くっきりとウッドデッキの床が透けて見えていた。 さらに視線を大通りの方へと移す。 行き交う人々は皆薄もやの衣を纏い、車はエンジンなどの内部構造を透けたボディに包み込み、建物は外壁越しに中の様子が窺える。 つまり、俺の実験は大成功というわけだ。
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