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「嬉しい誉め言葉だな。酒は飲まないから勧めるなよ。」
まだ騒然としている店の中で、換金にきた男から券を受けとる。
「ん、850……ああ、」
金を出そうとしたアニマだが、突然に手を止めて券を返した。
「悪い、偽造の券は換金不可だ。」
その言葉で、換金を頼んだ男は肩を揺らし、店内は一気に静まりかえった。
「ほ、本物だよ。」
「ウチの裏方をバカにすんなよ。」
それだけ言うと、交戦なら受けて立つと立ち上がる。
「証拠はあるのかよ!!」
その言葉には答えず、券を裏に向けた。
「この印は俺の指紋に反応して、赤から青に変わる。おかしいな。赤いままだな。」
羊の頭のような印は、古びた赤のまま、何の変化もしていなかった。
「俺の裏方に調べさせてもいいぞ。あいつは偽造犯に容赦する性格じゃないからな。」
リールを片手で振り回すカリアが脳裏に浮かび、ここにカリアを連れてくることは不可能だなと思った。
自警団なんかに見つかったら、殺されかねない。
「……くっ……悪かったよ」
それだけ言ったが、そこまで反省はしていないようだった。
「偽造は要求額の十倍の支払いだ。」
「なっ!」
その言葉に一気に顔色を変えたが、アニマは飄々と答える。
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