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「アニマ・スカーレット!!」
広い構内に響き渡った女性の声に、参拝にきていた人々は何事かと顔を上げた。
「アニマはどこだ! あのクソガキッ……」
周りの目線も解さず、金色の髪を風に揺らす女性はツカツカと奥へと進む。
「サティラ様、落ち着いてください……」
後ろからついてくる神父の声に振り返り、教会の中のすべての人を睨んだ。
「これが落ち着けるか! あのガキ、あろうことかこの私のむっ…………胸囲を測ろうとしやがって!!」
真っ赤になって小声で言ったサティラの胸は確かに、なめらかな素材の服を大きく持ち上げている。
「今日こそは捕まえて縛りあげて溶鉱炉に叩き落としてやる!」
「あの……死にます。」
「殺してやると言っているんだ!!」
神の御前で殺すなどとのたまわっていたサティラだが、一瞬だけ感じた気配に剣を抜いた。
「誰だ。」
誰もいない、きらびやかなステンドグラスに剣を向けたまま、サティラは先ほどまでとはうって変わって、静かな声で言った。
「誰だ。三度目はない。」
チャキ、と剣を持つ手に力を入れる。音のなかった教会の中に、クツクツと笑い声が落ちる。
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