仮入部

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  扉を開いた中には、普通の教室の半分の広さよりやや狭いくらいの、奥行きのある長方形の空間が広がっていた。 そこにはなぜかテーブルやらソファーやら流しやらガスコンロやらがあり、無駄に設備が充実していることが少し見回しただけでも分かる。 ソファーの上にあった毛布の塊がのっそりと動き出したかと思ったら、人が寝ていたようだ。 どうやら男子生徒であるらしいその人は緩慢な動作で起きあがると、頭を掻きながらこちらを見た。 癖っ毛で長めの髪の間から眠そうな目が覗いている。 「……おはよ。今日は遅かったから俺が開けちゃったっすよー」 「そか。ジン、この子仮入部の陣野麻衣さん。仲良くしてあげてね。陣野さん、こいつが……」 「きっちーが部室に彼女連れ込んでやらしい事しようとしてたのかと思ったのにー。残念」 菊池先輩が言い終わる前に、ジンと呼ばれた彼は淡々ととんでもないことを言い放った。 無表情から飛び出す爆弾発言。 私はそれに硬直するどころか、とっさに言い返す。 「な、私そんな軽くありませんから!」 「突っ込むのそっちなんだ? 面白い子だねー、よろしく。俺一応副部長で二年生のー……苗字で呼ばれるの好きじゃないから、ジンで」 「あ、はい。よろしくお願いします。陣野です」 ジンと名乗った先輩は、「なんか俺と名前似てるねー」とか呟きながらうんうんと頷いた。 髪の毛は長めの癖っ毛で、ところどころ無造作に跳ねている。 前髪が長くて目もとがよく見えないが、鼻筋や輪郭などは整っていた。 きちんとすれば美形なのに、外見にはあまり頓着しないようだ。 かなり勿体ない。  
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