アリスというコ

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アリスというコ

アリスと名付けられたのは、女みたいにおとなしくて、小さい頃は人形やぬいぐるみが好きだったから…らしい。 自分で自分の親をどうこう言うのも何だが、産まれた時に男女の区別はつくだろ。 普通、男にアリスなんて付けるかよ……。 「聞いてる?アリス」 何でもない、学校の帰り道。 目をやると、ルイは不満を通り越して呆れた顔を向けていた。 「何の話だっけ?」 「やっぱり聞いてなかった」 やれやれ、とでも言いた気に溜め息をつくものだから、何となく嫌な気分になった。 少し速めた歩調に、慌ててルイが付いてくる。 少しおっとりしたルイは、子供の頃からの付き合い。 お互いに反面教師で、ルイはお人好しで穏やかになったけど、俺は口より先に手が所か、口と手足が同時に出るようになった。 「だからね、いくら古くなったからって、人形とか…捨てるのは止めようって……」 「俺のモンだから勝手だろ」 「でも可哀想だよ」 少し後ろを歩くルイがしゅんとしたのは、声でわかる。 可哀想ねぇ…確かに燃やされたりすると思うと、夢見も悪い。 かといって、ずらりと並べられた、部屋のぬいぐるみを思うとこっちが溜め息をつきたくなる。 「欲しい奴がいたら、くれてやる」 それだけ言い残して、ルイと別の帰路についた。
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