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目覚める少年
ここはどこだろう…?
音も光もない。
まとわりつく闇。
その中に一人の少年。
少年が無我夢中に辺りを見回していると、ぼんやりした光が見えた。
同時にやさしげな甘い香りが漂ってきた。
目をこらして光の中を見つめると、少女が立っていた。
少年はその少女を知っていた。
そう、少女の名は聖(ひじり)だ。
「聖!」
少年は叫んだ。声がうまく出ない。声にならない声で彼女を呼ぶ。
聖はたたずんで少年を見ている。
ふと彼女は何かを思い出したかのように走り去る。
少年は何故か行かないで欲しいと強く思った。
そして声にならない声のまま、遠ざかる聖に向かって叫び続けた。
聖!聖!聖…。
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