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1年の秋の事。
学校から駅までの帰り道に遭遇してしまった。
綺麗な顔立ちの眼鏡をかけた男の子と歩いていた。
原田は、当然だけど背も高くなっていて大人っぽくなっていた。
シャープな印象を持たせる顔立ち。
認めたくはないけれど格好よくなった。
声なんてかけたくなかった。
でも過去のトラウマから逃げるのも悔しくて仕方なかった。
原田に駆け寄り声を掛けた。
「原田…だよね?私、篠崎聖だよ。覚えてる?」
すると原田は物凄い顔で私を睨んだ。
私は怯んだけどこらえた。
「わりぃな。過去の女なんていちいち覚えちゃいないんだよ。」
そう低い声で言い放った。
は?
過去の女??
一瞬何の事だかわからなかった。
「あ、あのさ。そんなんじゃなくて小学校で一緒だった…」
「そんなんじゃなおさら記憶にない。悪いけど街歩いてりゃあんたみたいに声かけてくる女山ほどいんだよ。」
原田と一緒にいた眼鏡の男の子は呆れ顔で言った。
「隆の女好きはそこまで筋金入りだったのか…。」
もう何を言っても無駄だと思った。
「ごめんなさい。時間取らせたわね。」
私は足早に駅に向かった。
原田は最低な奴だと思っていたけれど、あそこまで外道になっているとは思わなかった。
本当に、ここには私の知っている人はいないと思い知った。
同時に、いじめっ子の原田にほんの少し期待をしていた事に気付いた。
私は馬鹿だ。
「ちょっと、あなた。」
駅に着きかけた時、背後から見知らぬ女の子に声を掛けられた。
目の大きな可愛らしい子だ。
同じ制服を着ている。
「え、私?」
「そう。あなたクラスと名前は?」
何だか感じの悪い子だ。
「1年B組、篠崎聖よ。」
同じ学校の子なら名前くらい知られても支障はないと思って名乗った。
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