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「ふーん…。」
彼女はまるで値踏みでもするかのようにじろじろ見てくる。
とことん感じの悪い子だ。
「あの、何か?」
「あなた、馨に何の用だったわけ?」
「は?カオルって?」
「あなたがさっき声掛けてた二人組の一人よ。」
「あぁ、原田といた子ね。あいにく彼とは面識ないわ。」
「あぁ、なんだ。あはは。あなた原田君の彼女の一人だったのね。」
「失礼ね!私はただの知り合いよ。向こうは記憶にないみたいだけど。」
あまりにも腹が立ったので思わず言葉を荒げてしまった。
「ふふ。ま、いいわ。私は1年G組の森崎鈴花。
馨は私の彼氏。だから手出さないでよね。」
「言われなくてもあなたみたいな可愛い彼女がいる男を好きになったりはしないわ。」
「あら、そう。わかればいいのよ。じゃあね、聖。」
どうやら森崎鈴花には皮肉が通じなかったらしい。
だいたいなんなの、あの女は…。
ファーストネームで呼ばれる筋合いはないわ。
彼とは関わることはないだろうし、ましてやあんな人とはもっと関わり合いになりたくはなかった。
それから一週間くらい経ってからの事だった。
放課後担任教師の中里に呼ばれた。
中里は30代前半くらいの、教師陣の中では若い女教師だ。
「篠崎さん、秋野さんの事なんだけれど…」
秋野さん…秋野真弓。夏休み前から不登校になっている女子だ。
「彼女、なかなか学校に来ないじゃない?親御さんも理由がわからないみたいで…あなたからそれとなく聞いてみてもらえないかしら?
できれば登校するように…テスト近いのに悪いんだけど、お願いね?」
中里はこっちがうんともすんとも言わないうちに職員室に引っ込んでしまった。
私は気が付くと屋上に向かっていた。
嫌な事があったり、イライラした時には頭を冷やして冷静に自分を見なおせる場所。
階段を駆け上り、立入禁止の屋上への扉を開けて飛び出した。
「だいたい何?私に丸投げ?!冬のボーナスに響くのにビビってんのが見えてるわ。
馬鹿な大人ね。
あいつの英語の授業だって発音汚いし!」
言いたい事言い切った。
息が切れていた。
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