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目を開けると景色は白い天井だった。
少年はさっきの深い闇の中での出来事と、どちらが夢なのか区別もつかずにいる。
どうやらこちらが現実らしいと思った。
少年が目を開けた事に気付いた数人の人たちが駆け寄る。
「馨(かおる)!!」
中年の男女。白衣を着た男。制服を着た少女。少年はゆっくり起き上がり、自分を囲む人たちを見渡す。
「馨。心配したぞ!」
「あなた一週間も眠ったままだったのよ!」
中年の男女は涙ながらに語り掛ける。
制服を着た少女は少年に抱きつき、泣きじゃくっていた。
少年はそういった人たちをあっけに取られたように見ていた。
そして数人の人たちは少年の呆然とした顔つきを奇妙に思い始めたらしい。
「馨…?」
少年の胸で泣きじゃくっていた少女も顔を上げる。
少年はようやく口を開き、一言つぶやいた。
「あなたたちは…?」
少年の一言は数人の人たちを騒然とさせた。
白衣を着た男が駆け寄り、少年に質問を投げ掛ける。
「自分の名前はわかるかい?ここにいる人たちの事は?」
少年が何も答えられないでいると男はこう言った。
「もしかしたら頭部の外傷が原因で記憶障害を起こしているのかもしれない。」
外傷…?
なるほど少年の頭には包帯が巻かれていた。
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