聖の心

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なんだか、その場にいる事ができなくて帰ろうと思い立ち上がった。 「あ、そこの問1の英訳、間違ってるわ。」 それだけを言い残して学校を後にした。 私にできる、精一杯のお礼のつもりだった。 寡黙で冷静なのかはわからないけど、秋野さんが彼にひかれた理由がなんとなくわかった。 季節が越えて、春になった。 学年が変わり、クラス替えもある事だし気持ちは新たに…。 今年こそはクラス委員なんてやらずにひっそりしていようと思った。 「篠崎ちゃん。」 聞き覚えのある声…。 「原田…と椎名君。」 「俺たち3人同じクラスみたいだよ。よろしくね。」 (……最悪。) 「馨ぅ~。」 森崎鈴花だ。まさかこの子も…? 「またクラス離れちゃったね。でもいっぱい遊びにいくからっ。あら、聖。」 「あ、どうも…。」 よくわからない挨拶をしてしまった…。 「よかったじゃない。原田君と同じクラスで。」 違うから!って言おうとしたら原田にブレザーの裾を引っ張られた。 「何!?」 「森崎に心配されなくたって、俺たち順調よ?」 「あら、そうなの?ふふ。」 納得してしまったのか森崎鈴花は去って行った。 「ちょっと!何勝手な事言ってんの?!」 「声でかいぞ。そういう事にした方がお前の為だ。あいつは秋野の事があってから神経過敏になってる。」 原田は私にしか聞こえない声で話した。 「あいつを甘く見るな。それと馨に言ったりもするな。秋野の事とか…自分を責めかねない。」 そんな、権力だとか脅しに屈したくはなかった。 でも秋野さんがされた事を思うと恐くて仕方なかった…。 結局今年もクラス委員をやるはめになった。 推薦だけど。 そしてもう一人の委員は椎名君だった。 椎名君は、よく私を助けてくれた。 図書室で読みたい本が棚の高い所にあると何も言わずに取ってくれたり、委員では力仕事はいつもやってくれた。 担任に無理難題を頼まれたりすると庇ってくれた。 そんな私たちでも、あまり会話はなかった。 椎名君はそれほど社交的なタイプではないし、私は彼に対して一線置いていた部分もあったと思う。 2年生になってから、新しく友人ができた。 桐生朝海(きりゅう・あさみ)という子だ。 .
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