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朝海はショートカットが似合っていて、本当に寡黙で冷静なタイプで、物事を色んな角度から見る事ができる。
今まで出会った事のない雰囲気の女の子で、妙に気が合った。
ある日の昼休みに、朝海と屋上に行った。
なんとなく流れで、自分の話をした。
イギリスの両親の事とか…。
「聖は帰国子女だったのね?
なんとなく私はあなたが必死になってる気がしたのはご両親の事があったからなのね。」
「私が…必死になってる?」
「悪く言えばもがいてる。
ご両親が用意していたミッションスクールのレールから飛び出したからには、日本でうまくやっていかないといけない…そう思ってるんでしょ?」
「…朝海にはかなわないわ。」
「そして優等生のレッテルがべったり付きまとって困ってるんでしょ…?」
「…もうどうしようもないけれどね…。」
「でも、この際だから頑張りなさいよ。
優等生でいる事は悪い事じゃない。それに聖の本質をわかってる人間はここにも、あそこにもいるじゃない。」
朝海は屋上の出入口を指差した。
すると慌てふためく二人組がいた。
原田と椎名君だった。
「あ…ごめん、立ち聞きするつもりはなくて…。」
「ま、気にすんなって。別に言い触らしたりはしないぜ。」
半分呆れて笑えてきた。
1年のときは、一人で色々頑張ってきたつもりだった。
今は良き理解者がいるから…頑張ろう。
そう思えた。
嬉しかった反面、心配事が増えた。
その日を境に朝海が原田と仲良くなった。
二人で話し込んでいる所をよく見かける様になった。
委員の仕事で、クラス全員のノートを集めて職員室に持って行こうとした。
そういう時、椎名君は何も言わずに提出物を持ってくれる。
そのまま椎名君一人で職員室に行っても構わないのに、何故か申し訳なくて私も一緒についていく。
会話はないけれど、椎名君の独特なオーラが好きだった。
寡黙なのにどこか温かく、イノセントな雰囲気。
決して恋愛感情ではないけれど、人として椎名君は好きだった。
そんな時、階段の踊り場にいる原田と朝海を見かけた。
何の話をしているのか、わからなかった。
「気になる?」
椎名君の声で我に返った。
私は立ち止まってしまっていたみたいだ。
「あ、ごめんね。」
「桐生さんなら大丈夫だよ。しっかりしてるし、隆に口説かれたりはしない。」
「そう…だよね。」
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