聖の心

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なんで私が思ってた事が解ったんだろう。 椎名君は本当に不思議な人だ。 「よほど原田君が気になるのねぇ。」 森崎鈴花だ。 「聖は一緒に職員室に行くなんて律儀ねぇ。 私が代わりに行ってあげるからっ。じゃあね。」 森崎鈴花は見事な早業で椎名君をかっさらって行った。 まぁ、もともと椎名君は彼女の恋人なんだけれど。 私は、ずっと疑問だった。 何故あの二人は一緒にいるんだろうか。 美男美女だけど、性格はかなりかけ離れている。 森崎鈴花は悪人だ。 椎名君は多分それを知らない。 放課後、疑問を抱えた私は屋上に行ってみた。 屋上に奴がいる気がしたから。 奴はいた。日陰にねそべっていた。 「どうして椎名君はあの人と付き合っているの?」 原田はけだるそうに起き上がる。 「…あんた、馨が好きなのか?」 「そんなんじゃないけど…。」 「…森崎の親父が代議士ってのは死んだ秋野から聞いたんだろ? それだけじゃなくて不動産会社をやっていたりもするんだがな。」 「それが…?」 「馨の父親は建設会社の社長だ。」 「…癒着?まさか自分の息子をダシに?」 「8割方正解。あの小さい会社の割に、この街でたくさん仕事してるからな。」 「残り2割は?」 「まだ調査中だ…。俺の予想じゃあ、森崎親子は椎名家の何かしらの弱味でも握ってんじゃねーかなーと。」 「調査って…?」 「あんたみたいな子供は知らない方がいい。」 半ば否定できなかった。 原田はどことなく、私より大人なような気がした。 「そんなに、よその家の事調べてどうするの?」 「馨には何かと世話になってるからさ。 森崎は森崎なりに馨に愛情があるかもしれんが、お気に入りの人形なんかに対する愛情みたいなもんだ。 あんな女と別れさすためにだよ。 馨のためにな。ま、そのうち篠崎の協力もいるかもしれないから、その時はよろしくな。」 「……私に出来る事があるなら。」 原田は意味深ににっこり笑った。 「一番問題なのは馨自身だ。 自分自身より親を大事にしてるからなぁ。 自分を犠牲にしてまで癒着した関係を続けてるからな。」 その日以来、椎名君は私のそばに来なくなった。 もっとも、いつもそばにいたわけじゃないけれど。 休み時間の度に少し離れたクラスの森崎鈴花が椎名君を訪ねに来ていた。 職員室へは森崎鈴花と椎名君の二人で行くようになっていた。 .
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