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あぁ、誰か助けてくれたんだ…と目を開けると、仰向けに倒れている私を椎名君が抱きかかえていた。
「椎名…君?」
「篠崎さん!大丈夫!?」
椎名君は顔に血を流していた。
降ってくる鉄パイプから身を挺して私を守ってくれたのだ。
「椎名君!血が…!眼鏡、レンズにヒビが入ってる!」
「…大丈夫。眼鏡なくても割と平気だし。
それより篠崎さんは?痛い所ない?」
「私は何ともないわ。」
「よかった。」
椎名君は笑った。
けれどすぐに笑顔は曇った。
私が泣きだしたからだ。
「篠崎さん?どうかした?!」
「…ねぇ、どうしてそんな無茶するの?」
「…それは…今は答えられない。」
「もうこんな事しないでね…。」
「それは篠崎さん次第だよ。」
そう言って椎名君は笑った。
「おーい、ここの部分を切るから気を付けろよ。」
原田の声がした。
「原田!椎名君が怪我してるの。出来るだけ早くして。」
「あいよ!」
原田はちょうど私たちの真上に鋏を入れた。
椎名君は少し残念そうな顔をしていたのがわかった。
「だめよ。早く保健室行かないと。」
「…わかってるよ。」
原田がようやく人が出られる位の切り込みを入れおわった時、耳をつんざく声がした。
「馨ぅーーー!!」
椎名君のもとに走ってきた森崎鈴花は、テントの布越しに私の肩を蹴った。
「痛っ!」
「篠崎さん!」
「平気。先出て?」
椎名君を無理矢理先に出した。
「きゃっ!馨怪我してるじゃない!!早く保健室行きましょ!」
そんな声がしたので、安心した。
テントの切り込みから朝海がのぞいていた。
「聖、平気?怪我ない?」
「私は大丈夫。」
テントから出て、制服の埃を払った。
めちゃめちゃになったたこ焼き屋の上に3人でつっ立っていた。
どっと疲れが出てきた。
「しっかし、馨にはびびった。テントが崩れだしたら俺ら払い除けて猛ダッシュしてたよ。」
原田が意味深な目で私と目を合わせようとしたけれど、目をそらした。
「あ…。」
「どうしたの?聖。」
「私、椎名君にお礼言ってないわ。」
「明日言えばいいじゃない。」
「そうね。明日言おう。」
その「明日」が当分先になってしまうとは、この時の私には想像も出来なかった。
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