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「兼家、そこで何をしている」
朱雀門の下にぼう、と佇んでいた兼家が気付き、おう、と答えた。
その顔は、どこか沈んでいる。
「どうした、中納言殿、正三位に上がったばかりなのに随分浮かぬ顔だな」
冷やかすような口調で晴明が言う。
先の源高明の事件(安和の変/あんなのへん)の少し前に兼家は中納言に任じられ、公卿の仲間入りを果たしている。
正三位ともなれば、朝廷の権力の一角を担うに等しい。
従七位の晴明とは天と地ほどの隔たりがある。
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