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都会
それは、ビルが建ち並ぶ街。
眠らない街。
人の多い街のことである。
そんな、都会のある場所に少女はいた。
黒い革靴に白い靴下。真っ黒なドレスを真っ黒な帯で形造り、何でも吸い込んで行きそうな目を開き立っていた。
黒い髪はとても長く腰まで届き口元には薄い笑みを浮かべ右脇に古そうな分厚い本を抱え首もとから下げるネックレスには透明の玉が下がっていた。
面白い。
何故ひ弱な人間が、生き物の頂点に立てたのか?
それが今わかった気がする。弱いからこそ、人間は物に頼る事を選んだのだ。
彼女はそう確信していた。
街を行き交う人々は彼女を見向きもしない。あたかも其処には何も無いかのように・・・。
しかし人々はその場所を避ける。何かがそこにあるかのように。
全く無いのは違和感。同時にあるのも違和感。何かある筈なのに、何かがわからない。
当たり前なのに、引っかかる。
彼女が使った力は一つ、自分の親である修司が残した魔術。それも最強の魔術。決して生き物が逃れられない。神の下の制約の限りあるエネルギーにさらなる制約をかける事が出来る魔術の中のほんの一つ。
理
彼女はそう呼んだ。
彼女が願えばリンゴは地面に落ちないし、空が浮いている事もない。
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