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すっかりと夜の帳が下りた、静かな公園。
ベンチの隣に佇む蛍光灯の光だけが、しんしんと輝いている。
銀時はその公園に生えている、一本の大きな木に寄り掛かって、何かを待つように、じっとしていた。辺りの静けさと闇に身を溶けこませている。時折、冷たい風が頬を撫でると、首に巻いたマフラーに顔を埋めた。
「待たせたか。」
突然、銀時の前方から声がした。あの時と、幾分変わらない、低くてぶっきらぼうな声。銀時は顔を上げもせず、「いや。」とだけ答えて、目をつむり、遠い想い出の声に浸った。
相手は何も言わない。夜が益々寂しく感じられてしまうような、沈黙が続く。と、銀時は漸く目を開き、顔を上げて、前にいる相手を見据えた。
「……久しぶりだな、土方。」
土方は何も変わってはいなかった。それもそのはず、お互いに直接会っていなかっただけで、銀時は土方を見続けていたのだから。
土方は銀時が突然話の口火を切ったことに驚いたのか、はたまた、気まずかったのか、
「…あ、ああ…。そうだな。」
と、ぎこちなく答えた。
銀時は心の中で小さく舌打ちをした。
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