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「…あたし、帰りたいです」
震える声は、しーんと静まり返った室内に虚しく響く。
「俺は小百合ちゃんを家に帰す気なんてないよ。」
足を組みながら、お茶を飲んでいる猫さんは、まるで他人事の様に言い放った。
「まあ聞いてよ。」と、手をパタっと振ってまた話し出した。
「俺は、君がずっと好きだったから、監禁したんだよね。歪んでるけど、赦してほしい。さっきの事件みたいに、十何年もここに閉じ込めておくつもりも更々無い。人としてそれなりの生活もさせてあげるつもり。」
「…だけど、学校が」
「今話してるだろ?」
猫さんが少し息をついたときに、話し出すとジロリと睨まれた。
今まで優しい目をしていた痣のかかる美しい顔は、
苛々をよく表している眉間のシワが現れている。
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