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「お待ちしておりました! 我等が主!!」
「うわっ」
それにぶつかる寸前でなんとか止まった。
茂みから飛び出してきたのは、青年だ。
闇を切り取ったかのようは漆黒のコートとズボンを着ている。
…凄く、怪しい。
この時間に、こんな所で一体なにをしているのか。
そして何故、オレの前に立ち塞がっているのか。
「…すいません。急いでるんで…」
オレはなるべく青年と目を合わせないようにして、この場から逃れることにした。
歩き出そうとしたオレを青年は慌てて引き止める。
「待って下さい、我等が主」
「…変な勧誘はお断りしてるんで」
本気で走り出そうとするオレを、青年は前に回り込んで止める。
「驚かせたのなら謝ります、我等が主。久しぶりに会えたから嬉しくて、つい…」
「…久しぶり…?」
オレは長身の青年を改めて見上げた。
日本人という感じはしない。胸元まで伸びた黒髪に、ライトブルーの瞳。
…こんな人と知り合いになった覚えはない。
と、いうことは。
「あの…人違いだと思うんですが」
少し安心して息をはいた。
きっと誰かと間違えたんだろう。
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