第一話

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「宸夜~?どうしたの、早く上がって来なさいよ」 「………」 オレは夢遊病者のように、ふらふらと靴を脱いだ。 相当ひどい顔だったらしく、母がやって来て心配そうに声をかけた。 「…大丈夫?凄く疲れた顔してるけど」 「いや、ちょっとね」 言ったら言ったで心配をかけそうなので、ごまかした。 そこまで疲れて見えたのか、母はオレをしばらく見つめて尋ねてきた。 「部屋で休んできたら?なんだか、ご飯食べる気力もなさそうだし」 「え、でも父さんが用事あるって言ってたろ?」 「そんなの明日でもいいわよ。さ、行きなさい」 オレの肩を叩き、母はリビングに戻って行った。 オレとしては父の面倒な用事が、明日とはいえ先延ばしになったので、胸を撫で下ろしたいところだ。 が、現実離れした出来事があったせいか、頭がそこまでついていかない。 …母さんの言うとおり、部屋で休もう。 ぼんやりそんな事を考えて、階段を上がった。 廊下のつきあたりが自分の部屋だ。
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