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「宸夜~?どうしたの、早く上がって来なさいよ」
「………」
オレは夢遊病者のように、ふらふらと靴を脱いだ。
相当ひどい顔だったらしく、母がやって来て心配そうに声をかけた。
「…大丈夫?凄く疲れた顔してるけど」
「いや、ちょっとね」
言ったら言ったで心配をかけそうなので、ごまかした。
そこまで疲れて見えたのか、母はオレをしばらく見つめて尋ねてきた。
「部屋で休んできたら?なんだか、ご飯食べる気力もなさそうだし」
「え、でも父さんが用事あるって言ってたろ?」
「そんなの明日でもいいわよ。さ、行きなさい」
オレの肩を叩き、母はリビングに戻って行った。
オレとしては父の面倒な用事が、明日とはいえ先延ばしになったので、胸を撫で下ろしたいところだ。
が、現実離れした出来事があったせいか、頭がそこまでついていかない。
…母さんの言うとおり、部屋で休もう。
ぼんやりそんな事を考えて、階段を上がった。
廊下のつきあたりが自分の部屋だ。
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