桜散るその下で

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 築き上げた、仕事上のパートナーとしての絆と力は、確かなはずだ。  明日からまた、ビジネスパートナーとして上手くやって行けばいいわ。……やって行けるはずよ。  そう信じ込もうとしている自分が哀れで、可笑(おか)しくて笑えてくる。 「ふふっ。……馬鹿は私よ」  なんとかして、静流をまだ側に置こうとしている。  静流を縛りつけることなど出来はしないのに。  それでも彼女を繋ぎ止められるだけの理由がないか、必死に探している。  去る者は追わない主義ではなかったのか。  縋りつくことなど、プライドが許さないのではなかったのか。  自嘲は深くなる一方で、吐息が無様に引きつった。  三十を越えた女が、みっともないったらない。  それでも、静流を手放したくなかった。  今初めて、失いたくないのだと思い知った。  
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