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遊びなら、いくらでも笑って別れられる。
傷つけ合うこともなく、深みにはまることもない。けれどそれだけでは、満たされないのだ。
寄り添い支え合い、共に愛を食み年を取る。
そんな相手が堪らなく欲しい。いつまでも孤独で居られるほど、私は強くはない。
「あなたは、孤高の女戦士みたいだ」
「璃子の世界に、私は必要ないでしょう?」
別れた女の顔が、浮かんでは消える。
責めるような、諦めたような、哀しげな顔がいくつもいくつも……
泣いて縋りついて、引き止めればよかったっていうの? そんなこと出来やしないわ。
十年かけ纏った鎧は堅固で頑なで、簡単に泣くことなど許さない。数年前、母が亡くなった時ですら、泣けなかった。
だから恋人と決別する度、浴びるように酒を飲む。荒んであたり散らす。
その後始末やフォローをするのは、いつも静流だった。
静流を拾い、側に置くようになってから、六年。嫌な顔ひとつしたことがなく、万事そつなくこなす。
常に静かに私に従い、第一秘書としての有能さも、社内で一目置かれている。
長身痩躯と涼しげな美貌に強靭な意志を潜ませ、決して腹の内を晒さない。完璧過ぎるほどに……
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