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元カノ.....
今夜も、いつの間にかオープンしている『Bar Paranoia』.....
さぁ、今宵はどんなお客様が御来店されるのか。
いつもの様にドアの鐘が優しく鳴り響く。
🔔★(カランカラン)
入り口を見ると、少しはにかんだ女性がこちらを見つめていた。
私は笑顔で
『いらっしゃいませ🎵』と言うつもりだったが、途中で言葉を飲み込んだ。
元カノだ......
彼女は臆する事なくカウンターの前まで歩みよる。
『久しぶり🎵元気そうだね。』
そう言うと彼女は、以前に良く座っていた席に腰を下ろした。
この時に、ようやく私は言葉を発した。
『いらっしゃいませ。何になさいますか?』
彼女は、少し間を空けたが.....
『いつもの頂戴💕』とオーダーをしてきた。
“いつもの”とは『ホワイトレディー🍸』だった。
ジン30ml コアントロー15ml レモン15ml と言う中身である。
スタンダード中のスタンダードだ。
しかし、彼女はジンの指定がある。
ジンは必ず『ゴードン』 しかも、ジンが多目である。
私はいつも通りにシェーカーを振る。
小気味良い音が店内に吸い込まれていく。
彼女がそっと囁いた。
『良い音だね🎵』
私は照れながら、彼女の前のグラスに注ぐ......
いつもより『愛情』も注いで。
そして彼女は一口含み、こう言った。
『私ね、明日...結婚するの。』
期待していた言葉とは違いすぎて、私は何も言えずに佇んだ。
相変わらずのBGMのジャズが、この時は少しだけ耳に障った。
『おめでとう。』
この言葉が精一杯であった。
すると彼女は、
『それだけ?相変わらずたね....』
言い終えたと同時に、カクテルを飲み干し彼女は席を立ち.....
『いつも優し過ぎなのよね。たまには強引さも必要よ“女”には。』
そう言い残して彼女は店を出ていった。
カウンターに残された空のグラスの結露が、何故か彼女の『涙』に見えた。
ふと、我に帰った私は呟いた。
『お会計.....』
ま、いっか💧
結婚祝いだ。
(^人^)...(合掌)
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