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『ジンでお好きな銘柄はございますか?』
女性は迷わずに、
『ビーフィーターでお願い出来るかしら。』
私は冷凍庫から良く冷えたビーフィーターを取り出す。
グラスをアイシングして
ミキシンググラスに氷を入れステアする
オリーブを軽く洗い、カクテルピンを刺す。
レモンピールを丁寧に切り取る。
ミキシンググラスの水を捨て、ジンとドライベルモットを注ぐ。
ここからが勝負である。
全神経を、10本の指先に集中させステアする。
私は
『ここだ!』と心の中で呟き、ステアをゆっくりと止める。
そして女性の前にグラスを差し出し、マティーニを注ぎ始める。
ゆっくりと....
然しそれは『スロー』ではない。
言うなれば、女性を『リード』する感じに似ているかも知れない。
注ぎ終えたマティーニに、レモンピールの香りを右斜め45度から移す。
マティーニの完成だ。
ふと見た女性の瞳は、少しだけ輝きが増したように見えた。
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