粋だね🎵

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私もマティーニは、好きなカクテルの一つである。 そして、難しいカクテルの一つでもある。 女性は更に語り始めた..... 『こちらのお店はオープンして長いの?』 と、問いかけてきた。 私は、自分のお店がオープンしてからの事をおおまかに話した。 それを聞いてからの女性は、私に興味がわいたのか、色々と質問をしてきた。 どこに住んでるの? 両親は健在なのか? どこで修行したの? この仕事は好きなのか? 正に質問攻めであった。 私は『少し』不思議に思い、思わず聞いてしまった。 『何故、そんなに質問されるんですか?』 少し身を乗り出して聞いていた女性は、申し訳なさそうに姿勢を正した。 “何故だろう?”と言う疑問が更に深まる..... 何か.....バラバラになっていたパズルが一つ一つと私の中ではめられていく。 いつしか、“疑問”が“確信”へと変わっていく... そのうちに女性は、マティーニを飲み干し、こう言った。 『有り難う、とても美味しかったわ。また来たいけど、今度はいつ来れるかは分からないわ。』 と言い残し席を立った。 女性がドアに差し掛かった時、私はいつも通りに言った。 『有り難う御座いました。いつでもお待ちしております。』 その言葉を聞いて女性はドアを開け、階段を登り始めた。 私は見送りながら更にこう言った。 …有り難う… …『母さん』… 少し驚いた表情で振り向いた女性は、直ぐに『笑顔』になり、軽く私に手を振りまた階段を登り始めた。 私は囁いた。 女性に聞こえない位の声で.... …また、逢えるよね母さん…… 女性の姿が見えなくなっても私は、しばらくその『場所』に佇んで居た...... おしまい
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