プロローグ

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燃えさかる炎 紅色に燃える炎の中に、男の子は立っていた。 家の中だと思われるその場所は、熱に耐えられなくなって砕け散ったガラスの破片が床に散乱し、赤色の炎を纏って燃え続ける物で溢れていた。 そこに居た「生きた人間」は男の子一人だけだった。 目の前には、赤色の水たまりに身を落とす、二人の男女が横になっていた。 そう、それはまるで「屍」のように。 小学校低学年と思われるその男の子は、手には血のついたナイフを握っていた。 その表情は困惑しているような、呆然としているような、悲しんでいるような表情だったが、突然、力なく、口元だけで笑い始めた。 ただ、その手に持っていたナイフから、血が涙のようにこぼれ落ちた。
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