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携帯のディスプレイの時刻は、午後10時になった。
黒い服とマント、ピエロのような仮面、白い手袋を身に付けた俺は、舞阪市の南部にある廃工場の前に居た。
この服は自前ではなく支給品だ。
決して俺の趣味ではない。
錆び付いたシャッターが、長期間使われていないことを物語っている。
「ここか…。随分と趣味が悪いな」
ガシャーンッ
シャッターを蹴破り、中へと入っていく。
そこに居たのは、一般人が見たこともないような奇形の怪物――――《魔蟲》。
大量の足が生えた、例えるなら体長約3mのムカデのような姿の怪物は、俺に気づくとすぐに襲いかかってきた。
ドゴォォォォン!!
鉄筋コンクリートの壁を一撃で砕く突進をしても、体に傷一つ負っていなかった。
その突進を避けた俺は後ろに回り込み、理解できないとは思うが、暇つぶしに呟いてみる。
「随分と大きいムカデだな。悪いが虫は嫌いなんだ。すぐに終わらせるぞ」
キシャァァァアア!!
《魔蟲》は五月蝿い鳴き声を上げる。
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