第一章 日常と非日常

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携帯のディスプレイの時刻は、午後10時になった。 黒い服とマント、ピエロのような仮面、白い手袋を身に付けた俺は、舞阪市の南部にある廃工場の前に居た。 この服は自前ではなく支給品だ。 決して俺の趣味ではない。 錆び付いたシャッターが、長期間使われていないことを物語っている。 「ここか…。随分と趣味が悪いな」 ガシャーンッ シャッターを蹴破り、中へと入っていく。 そこに居たのは、一般人が見たこともないような奇形の怪物――――《魔蟲》。 大量の足が生えた、例えるなら体長約3mのムカデのような姿の怪物は、俺に気づくとすぐに襲いかかってきた。 ドゴォォォォン!! 鉄筋コンクリートの壁を一撃で砕く突進をしても、体に傷一つ負っていなかった。 その突進を避けた俺は後ろに回り込み、理解できないとは思うが、暇つぶしに呟いてみる。 「随分と大きいムカデだな。悪いが虫は嫌いなんだ。すぐに終わらせるぞ」 キシャァァァアア!! 《魔蟲》は五月蝿い鳴き声を上げる。
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