2/20
前へ
/46ページ
次へ
何かと理由をつけて早々と新居に移り住んだのはあたしがまだちっとも悠斗を忘れていないから 嫌でも目にする隣りの家はその間取りもお気に入りの場所も覚えていて、一緒に過ごす時間の短かった学校よりも家にいる時の方がつらかった 推薦で早々と決まっていた大学の近くに、卒業するとすぐに移り住んだ。 春休みはまるまる新居で過ごして入学式を明後日に迎える今日は、ずっと暮らしていたと思えるほどに部屋は落ち着いている 学校が春休みに入って、日に何度も電話を掛けてくる小学生の妹は 『お姉ちゃんいつ帰ってくる?』 毎回そう訊いてくる。 『直ぐ帰ってくるから』 ゴールデンウイークも夏休みも帰る気は無いと、本心は言えなかった 『うん、待ってる』 嬉しそうに声を弾ませるたった一人の妹に胸が痛むけど  
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

903人が本棚に入れています
本棚に追加