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そんなあたしの足の先が見えているのか悠斗は
『さくら、ちょっとこっち来い』
むちゃを言う
『なんでよ…』
『いいからこっち来いよ』
自分の隣りをポンと叩くけど、今1ミリだって動けない
『いや、無理だから』
視線を逸らしてそっと足を崩した。指先で摘んでも感覚は無い
『んだよそれ』
ふてくされる理由は無いんで無いかい、悠斗さん。足が痺れてなくても隣りに行く気は無いけどさ
『なんか話があるんじゃないの?』
『あーまあ、そうだけど。
…俺S大受かったんだ』
『そう、おめでとう』
『それでさ…俺このマンションに越して来たんだよな』
なんだそんなこと?珍しく歯切れの悪い悠斗は頬を指で掻く。悩んでいる時の癖はずっと変わらないらしい
『うん、そうだと思った。それであたしは悠斗の分もご飯作ればいいんでしょ?』
『えっいいのか?』
目を丸くする悠斗は多少なりとも気にしていたようだ。お互い話さなくなって久しいから、頼んでいいのか悩んだんだろう
『いいよ別に』
『そっそっか、良かった』
ホッとした表情で悠斗はニカッと笑った。不覚にもときめいてしまった自分が情けない
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