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『あっ兄ちゃんの分もあるぜ』
ガバッと起き上がった悠斗はハッとした
後ろ手に隠した武斗がニヤニヤしている
『ん…』
右手を突き出して“やれ”と言う
普段、悠斗はそんなつもりは無いが、虐げられている武斗は年に数回あるかどうかの、自分が優位に立てる機会を逃したりしない
胸を突き出してふんぞり返ると目を細めた
『下さいは?』
『くっ下さい…』
まんまと思い通りになった兄が面白くて仕方ない武斗は調子に乗った
『へぇー兄ちゃん沢山もらったんだからいらねぇだろ?俺はさっきの2つだけなんだから俺にくれよ』
甘い物は嫌いじゃない。くれるって言うんだから、迷い無くもらった。だけど、武斗が隠しているモノとそれは違う
例え、それには気持ち一つ入っていなくてもだ
『…いい加減にしろや』
血を這うような低く威圧する声に武斗はやり過ぎたと後悔した
そして…困り果てた
思わせぶりな態度を見せてはみたが、後ろに隠した箱は一つ
赤い包装紙のそれは間違っても兄の望む物ではない
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