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『にっ…兄ちゃん…怒らない?』
青ざめてカタカタ震えながら悠斗の顔色を伺った
…ダメだ、終わった…
頬杖をつく悠斗の足元はゆっくりと床にリズムを刻む
怒りが最高値に達した時、悠斗は静かに怒るのだ
それは稀に見る光景で無表情ぶりが余計に恐ろしく感じるのだ
『どっどうぞ』
床に正座した武斗は頭を下げたまま両手で箱を差し出した
『ああ』
ぶっきらぼうに言った兄に武斗は不安にかられた
心臓はこれ以上無いくらいにバクバク音を立てて、全身が心臓になったみたいにドキドキする
そうっと様子を伺った兄は手のひらで口を覆ってにやけそうになる顔を隠しているようだった
小学生ながらも兄のこと、隣りに住む幼なじみの姉のこと、何かあったらしいことは感じていた
昨年から兄へのチョコレートは一つになった
勿論、自分のは2つとも義理だし、兄へのも義理だと思う
だけど、毎年一番最初に食べるチョコレートは知っていた
沢山ある中で一番先に食べるんだ
仲直りすればいいのに
はにかみながら眺める兄を見ながら武斗は思っていた
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