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「…なにこれ、全然見えないじゃん」
ちょいと王子様とやらの顔を拝んでやろうと、廊下を覗いたけども。
そこには、女ばかりの人だかり。
口々にきゃあきゃあ言いながら、一人の男子生徒を囲んでいる。
教室の窓からも、たくさんの女の子が覗いてる。
「まー、すごい人気だしねー。超がつくくらいのイケメンだし、頭もいいし、金持ちだし」
「へー」
「へーって…リアクション薄っ」
そんなこと言われてもさ。
ホントに興味ないんだもん。
心の中でそうつぶやきながら、人垣の間から、頭一つちらりと覗いた王子様の顔を眺める。
緩やかにウエーブがかった柔らかそうな髪。
自信に満ちて輝く、深い黒い瞳。
整った目鼻立ち。
まるで、人形のようにきれいな顔。
「へー、美人だね」
「美人って表現もどうかと思うけど」
あたしの素直な感想にツッコむサチ。
でも。美人と表現するにふさわしい、中世的できれいな顔立ちだった。
そのとき。
ぼーっと眺めていたあたしの視線と、「れおさま」の視線が、一瞬ぶつかった気がした。
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