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「フェリシアーノ、」
扉を開けた人物は流暢なフランス語でフェリシアーノを呼んだ。
「兄ちゃん!」
その声にいち早く反応したフェリシアーノは、先ほどの出来事が無かった事かの様に嬉しそうにフランシスに抱きつき、そして啄むようなキスを贈っていた。フランシスはそれを笑いながら甘受けする。
「好きだよ、兄ちゃん」
「ん、愛してるよフェリシアーノ」
まるで恋人同士の様な2人にローデリヒは驚き、と同時に怒りと胸の痛みを感じた。嫉妬、という字が浮かびそれを消すように目を強く閉じる。
「ところで兄ちゃんどうしたの?」
「ああそうだ、フェリシアーノ、お前の上司がお前をお呼びだ。話があるんだと」
「えっそうなの?…もう少し兄ちゃんといたい」
「我慢しろ、今は大事な時期なんだから。」
フランシスの声はひどく優しいものだった。離れるのを躊躇うフェリシアーノを宥める声。多分表情も随分と優しいのだろう。この声が、笑顔が自分に向けられたものだったらどれだけ幸せだろう、とローデリヒは心底思った。そんなはずは無いのだが。
「……じゃあ行ってくるね。すぐ戻ってくるからね!」
バタン、と扉が勢い良くしめられた。数秒して足音が遠ざかっていく。くすくすという笑い声につられて目を開けると、目の前にフランシスがいた。
「なんです?」
不機嫌そうにそう尋ねれば、目の前の男は口の端を吊り上げ面白そうに笑いこういった。
「仲直りしよっか、ローデリヒ」
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