*第4章*

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霧雨のせいで、少し濡れてしまった髪の毛を手でパタパタしながら、家庭科室へと向かった。 歩いていると、さっきの出来事が頭の中をぐるぐるとする。 冷静になってみると、さっきの体勢は、とんでもないっ・・・。 カァァァァ・・・ 顔が熱くなった。 ガチャ。 夢中で家庭科室のドアを開けた。 「あ、しぃ!  おかえり~・・・ふぁあ・・・」 「・・・」 「・・・ただいまー」 眠そうに伸びをする美凪。 もしかして、美凪・・・。 「美凪、今まで寝てた?」 「うん。  何か、しぃがいないとつまん  なくってさぁー。  いつの間にか、寝ちゃって  た」 あー。 だから桜庭君、俯いて黙ったままなんだ。 勝手にそう解釈して、桜庭君の隣の席に腰をかけた。 それに気付いてもいないかのように、桜庭君は微塵にも動かない。 ・・・あれ。 ショックが結構大きい? 「桜庭君、ドンマイだよ」 「・・・」 小声で、桜庭君だけに聞こえるように言ったけど、それでも桜庭君は全く動かないままだった。 重症だなぁ・・・。 「あたしさぁっ!  家ですごいデコの練習して来  たんだよ!」 美凪が立ち上がって、キッチンのそばへと行った。 その行動に、桜庭君が少しだけ反応を示した。 「そっか!頑張ってるんだね」 「うん!  そして今日は機嫌がいい!  エプロンは新しいし!  いい夢見たしっ」 「えへへ」と、いつもの美凪なら見せないような、だらしない笑顔を見せる。 よほど、いい夢だったんだろう。 ピク! 美凪の発言に、桜庭君が肩を震わせた。 それに気付いて、俯く桜庭君の横顔を見ると、眉間に皺を寄せて、悲しい顔をしていた。 ・・・何があったの・・・? 「・・・なぁ、春日」 「・・・へ?」 桜庭君が突然話し出した。 美凪は新しいエプロンを身に付け、はしゃぎ回っているため、私達の会話は聞こえていないようだ。 「春日。  俺、美凪の何かな」 「・・・さ・・・くらば、君?」 軽く横を向いて、久しぶりに見たような桜庭君の顔は。 予想以上に、痛々しかった。  
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