*第4章*

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「どうしたの?いきなり」 ふ、と軽く息を零して、薄く笑う桜庭君。 いつもは、そんな寂しい顔しないのに。 だからこそ、余計に痛々しい。 「・・・何か、分かんなくなっ  た」 「・・・どうして?  美凪にとって、きっと。  桜庭君は、大切な存在だよ」 「・・・友達として?  恋人として・・・?」 「それは・・・」 「ほらな」と言って、また悲しく笑う桜庭君。 全てを諦めてしまったような。 冷めた表情。 「・・・やめてよ・・・。  そんな、・・・桜庭君らしくな  いよ・・・」 「・・・なんか、急にさ・・・。  俺、どうしようもない、いた  たまれない恋をしてるんじゃ  ないかと思って」 桜庭君は机に突っ伏して、ぷしゅーっと大きく息をはいた。 「桜庭君・・・」 どう慰めていいのか、さっぱり分からない。 こんな時、どうすればいいの。 「千尋ー!  何、だらだらしてんのよ!」 元気の無い桜庭君に気付いて、美凪が早足で近付いてくる。 「・・・」 「む、無視?」 初めて見た。 桜庭君が、美凪の言葉を無視するところ。 美凪も、無視されたのは初めてなのか、多少戸惑っている様子がうかがえた。 「千尋のくせにーっ」 むきー。っと可愛く叫んで、美凪が桜庭君のいる机の周りをぐるぐると走った。 それでも、桜庭君は顔を上げなかった。  
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