*第3章*

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「あなた、昼休みに柳瀬君に近  付いてたわね?」 「そ、それは・・・。  ただ、先生からの伝言を伝え  てただけで」 「言い訳は無用よ。  裁きを受けてもらうわ」 エリカの手の動きに合わせて、手下のような女がしなやかな手を振り上げた。 おびえる女子生徒は、固く目を瞑った。 「すっ、ストーーーっプ!!!!」 ぴた。 だけど、振り上げられた腕は止まった。 そう。 「・・・また春日 栞ちゃんか」 私の大声のせいで。 「ダメです、ダメですっ!  暴力反対です!!」 「・・・はぁ・・・。  何で毎回、邪魔するの」 振り上げられていた手を握りしめて、真っ直ぐに相手を見据えると、小さくため息を吐いて、観念したように手を下ろした。 その行動に、私は安堵して握っていた手を離した。 「私は、この風紀員のやり方は  間違っていると思うので、対  抗しているだけです」 「あなた、分かってる?  私達の行動は、柳瀬君なら確  実にやめさせられるのよ?  それなのに。  あなたが間違いだと思う私達  の行動を阻止しないのは、ど  うしてだと思う?」 「・・・瑞貴先輩は、権力を使う  のが好きじゃないんです」 「違うわ。  私達の行動を、ありがたく思  っているのよ。  邪魔な存在を、最低限に抑え  られますもの」 ガサガサ! 私と風紀員の人達で話していると、目を付けられていた女子生徒は、走って逃げ出した。 「あらら。  逃げられちゃったわ。  ・・・ねぇ、春日さん」 「はい」 多数の先輩の群れから、エリカが姿を現した。 腕を組んで、冷たい瞳で私を見ている。 「あなたみたいな人を、なんて  呼ぶか、教えてさしあげる  わ」 「・・・?」 エリカはすごく近くまで寄ってきて。 腰を少しかがめて、私の顔にその綺麗すぎる顔を近づけてきた。 甘い香水の匂いが、鼻をかすめる。  
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