*第1章*

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《―――・・・》 あれ? この部分が聞こえない。 「・・・ねぇ」 「・・・ぇ・・・?」 低いけど、心地良い低さ。 音楽的に言えば、テノールくらいの低めの声が聞こえた。 薄っすら目を開けると、長い足が目に入った。 ・・・こげ茶色と黒の細かめのチェックのズボン。 これって、私がはいてる制服のスカートと一緒の柄。 「・・・香蘭駅、着いたけど」 明らかに私に言われてる。 「あっ、はい!  ありがとうございますっ」 一気に目が覚めて、バっと立ち上がった。 そして、相手の顔を見上げた。 背、高い。 首痛い・・・。 「・・・どういたしまして」 相手は柔らかい笑みを控えめに浮かべていた。 「あ・・・」 綺麗な顔。 第一印象はそれだった。 色素が薄い感じの髪の毛に、それと同じ色の瞳。 笑って細くなった瞳に、優しい印象を受ける。 唇は薄く、淡いピンク色。 ーって、何分析してるの!私! 「・・・でっ、では!!」 「・・・うん」 一礼して、慌てて電車を降りた。 時間に余裕が無いわけではないけど、走って改札を出た。 心臓がバクバクいってる。 なんだか、思い知った気がした。 一緒にいるだけで、自分が惨めになるような、そんな気分を。  
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