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「みっ、瑞貴先輩!
恥ずかしいですから!
いじめられてませんからっ。
離れてください」
「無理」
即答された。
間近にある端整な顔が、無表情なままに私を見つめる。
胸がドキドキと言って、うるさい。
「いっ、言いましたよね?!
私達!瑞貴先輩とは、5分以
上は絶対にいられないんで
す!」
「・・・風紀員か・・・」
瑞貴先輩が、珍しく表情を崩して髪をかきあげた。
瑞貴先輩のことだから、意識しての仕草じゃないだろうに。
すごい、男の色気を感じるんですけど・・・。
「現在、4分30秒」
時計のように無機質な声で、潤先輩は言った。
「しぃ、いっ、行こっ?」
美凪が顔を俯かせながら、私の腕を引いた。
それと同時に、私の腕をつかんでいた瑞貴先輩の腕の力は弱まって、私を解放してくれた。
・・・私、きつく言いすぎたかなぁ・・・。
少し首を傾げて私を見る瑞貴先輩を見ると、妙に胸が締め付けられた。
*
「瑞貴のばーか」
「本当よ。
風紀員の動きを止めれば、栞
ちゃんとずっといられるの
に」
「・・・」
「・・・」
瑞貴と潤が黙る。
「あ。
潤は瑞貴と栞ちゃんがペアで
いられると困るか」
「うっせ」
少し顔を赤らめる潤。
おもしろそうに、常盤は笑った。
瑞貴は、少し不機嫌になった。
「・・・俺に、頼んできたら。
止めさせる。すぐにでも」
「頼まれたら、って。
栞ちゃんに?」
黙って瑞貴は頷いた。
「瑞貴は栞ちゃんを中心に回っ
てるものねぇー」
常盤が満面の笑みで空を仰いだ。
「栞ちゃんに頼られたいん
だ?」
意地悪に常盤が聞くと、瑞貴はまた頷いた。
潤は終始、黙っていた。
*
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