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「あっ、あんたねぇっ!
あたしが潤先輩を好きってい
う弱みを握ってるからって、
からかわないでよ?!」
「本気だよ、俺」
「あー、あー!あーー!!
うるさーーーーーいっ!!!!
そんなの、信じないから
っ!」
「・・・そう」
一気に千尋の声のトーンがダウンしたのが、美凪には分かった。
だって、信じられない。
ずっと、友達として接してきた千尋が、自分にそんな気持ちを抱くことはありえないのだ。
横目で千尋の表情を確認する。
そんな美凪に気付いて、千尋は美凪に悟られないように、悲しい顔を押し隠して、いつものへらっとした表情を浮かべた。
「バレた??
冗談だよ、じょうだーん。
いや、でも、この嘘で美凪を
落とせたらラッキーかな、と
は思ってたけど、なんて」
後頭部をカリカリとかきながら、千尋は体をくるっと1回転させて美凪の前に回りこんだ。
美凪は目を見開いて、おどけた表情をする千尋を見つめた。
「嘘?」
「うそだってば。
あれ?実は、本気にして
た?」
パンッ!!!!!!!!
「最低」
乾いた音が、誰もいない通りに響いて、残酷なほど冷たい美凪の声が、千尋の胸を切り裂いた。
美凪はキっと千尋を強く睨んで、固まる千尋を置いて、さっさと行ってしまった。
「・・・じゃあ、ちょっとは俺を
男として見ろ、馬鹿美凪」
千尋は、誰もいなくなった通りで、平手打ちされた左頬を押さえながら、ぽつりと呟いた。
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