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逃げ込むようにキッチンへ入り、チョコレートや卵を用意して、さっそく調理を始めた。
ひなたは無意識かもしれないけど、私は振り回されっぱなしだ。
・・・うぅ。
眉間にしわを寄せながら、ボールに材料を入れて、愛用の泡だて器で混ぜた。
ふき抜けの構造になっているキッチンから、気持ち良さそうに日向ぼっこを続けるひなたの背中が見えた。
夏真っ盛りなのに、変なの。
いや、もっと変なのは私かもしれない。
どこの誰かも分からないようなひなたを、今では当たり前のように家へ上げているんだから。
私も大した変人だー。
もんもんと考え事をしていたが、手元のボールに思考回路を戻すと、そんな考え事は見事になくなった。
料理をしている時は、何にも考えなくなる都合のいい私の頭に感謝。
「・・・出来た」
40分ほど経って、簡単なおやつが出来た。
後は、粉砂糖をふって・・・と。
練習がてら、生クリームでデコレーションすればっ。
「かんせーい」
小さな声で、自分を褒め称えるように言い、手を小さく叩いた。
切り分けてお皿に盛り付けて、リビングのテーブルへと運ぶ途中、ひなたの方に目をやると、背中がゆらゆらと揺れていた。
テーブルの完成したおやつを置いて、そっとひなたに近付き、顔を覗きこむと、案の定、ひなたは寝ていた。
背もたれも無いのに、座ったまま寝られるなんて。
ひなたもやるな、なんて。
立ったまま寝たことのある私が、エラそうには言えないけれど。
「寝るときも、眼鏡は外さない
のかなぁ・・・」
ぽつん、と呟いて。
綺麗な寝顔を間近で見つめた。
近くで見れば見るほど、すごく美しい顔立ち。
ひなたは男だけど、憧れちゃうよ。
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