*第3章*

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スースー、と気持ち良さそうに、規則正しい寝息をたてるひなた。 そんなひなたを見つめて、小さく笑みを零してしまった。 そして。 太陽の光を浴びて、きらきらと光る茶色い眼鏡に手を伸ばした。 けど。 パシ。 「えっ?」 「・・・いたずらは、ダメ」 「や、いたずらしようと  は・・・。  起きてたんですか・・・」 「・・・うん」 伸ばした手を、まさかの起きてたひなたが掴んだ。 私が、間近でひなたを覗きこんでいたため、未だに距離が近いまま。 眼鏡の奥の瞳が、やんわりと私を映す。 「あ、おやつ出来たんですよ」 「・・・いい匂いがする」 「ガトーショコラです。  手をかけてないんですけど、  味は大丈夫だと思います」 「・・・うん」 ひなたは笑って、ゆっくりとした動作で立ち上がった。 その姿は、まるで猫のようだった。 「・・・綺麗」 「ありがとうございます。  今、学校でデコレーションの  練習をしてるんで」 「・・・上手だね」 「・・・」 ひなたに言われると、すごく嬉しくなる。 そして、もっと上手になれるような気がした。 目の前で、ひなたが「美味しい」と言いながら、私の作ったガトーショコラを頬張る。 それさえにも、すごい大きな幸せを感じた。  
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