*第3章*

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「あれ?  前に言いませんでした?  この怪我は、コケてできたん  ですよ?」 「・・・毎日、コケてるんだ」 う。 うぅ・・・。 撫でていた手を離して、席を立ったひなたが私に近づいてくる。 そして、顔を下げて言う私の顔を覗きこんできた。 「・・・そ、そうなんですっ!  ドジなんですよ、私。  自分で言うのもなんですけど  ね」 目を細めて、微妙にひなたから視線を逸らした。 そんな私を見て、ひなたは口角だけを上げて微笑んだ。 「・・・そう。  気をつけて」 「・・・あ、ありがとう?」 だ、騙せた・・・? もう、嘘ってどうやってつくんでしょうー? 嘘をつくとき、目なんて合わせらんないよー・・・。 「・・・日が、沈んできた」 「本当ですね」 帰るのかなぁ。 「・・・帰る」 「ですよね」 帰っちゃう。 でも、まぁ。 明日も会えるんだもんね。 寂しくない、寂しくない。 「バイバイ」 「さようならぁー」 少しだけ上機嫌な私。 一番いいのは、ずっとひなたと一緒にいられることなんだけどね。 こー、心が温かいというか。 ひなたといたら、癒されるんだなぁー。 パタン。 「はっ!」 玄関が閉まる音で、我に返る。 ガチャ ガチャ ガチャッ バン! 「・・・いない・・・」 外には、もうひなたはいなかった。 「・・・はぁ、学習能力ないな  ぁ。私」 今でも、実はひなたは瑞貴先輩なんじゃないかって。 まだ、疑っているんだ。  
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