*第3章*

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「来たわね。春日 栞ちゃん」 私が叫ぶと、大人数の風紀員がちらばって、道を開け、そこを通ってエリカが現れた。 「・・・あれ?」 誰も、囲まれていない。 制裁という名の暴力をしているのだとばかり、思っていたのに。 「そうよ。  今回、風紀員が集まっていた  のは、制裁のためじゃない  の。  栞ちゃんを、おびき出すため  に、誰かを囲んでいる風に見  せてただけよ」 「私をおびき出す?」 不思議そうに首を傾げると、エリカは長い指でパチン、と音を鳴らした。 それが、何かの合図だったのか、風紀員達は私とエリカだけを中庭に残して、消えていった。 「・・・栞ちゃんと、2人で。  1度、話がしたくて」 「私と、話し。ですか?」 なんだか、嫌な予感がする。 「本題に入らせていただくわ。  あなた、ラベンダーハウスに  住んでいるそうね?」 「・・・住んでますけど・・・」 エリカは「やっぱり」というような、こちらを見下すような目をしてみせた。 嫌な感じだけど、やっぱり、綺麗なのには違いなくて。 「しかも、生徒会の方達と、ご  近所なんですってね。  よく上手く、そんな部屋を手  に入れられたものね」 「・・・はぁ・・・」 どこからそんなに詳しい情報が入ってくるのだろう。 エリカの綺麗な顔を見つめながら、変な所に感心をした。 「・・・油断も隙もないわね。  あなたの事、甘く見てたわ。  今後、要注意人物として、監  視するわ」 「えっ!  あの、私。  やましい事は、何もしてない  ですよ」 「証拠が無いでしょう。  せいぜい、自分の行動には、  気を配ることね」 大きな瞳が、私を捕らえた。 その目力に圧倒されて、何も言えず、立ち尽くしていると、急に肩を強く突かれた。 ぼーっとしていた私の体は、大きく傾いて、派手にこけた。 エリカさん、怒ってる。 そういえば、常盤先輩が「瑞貴に惚れてから変わった」と言っていた。 瑞貴先輩の近所に住む私に、嫉妬しているんだろうか。  
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