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「もぅっ!
瑞貴先輩ってば!
もう、5分経ちます!
帰りますね、私」
相変わらず、私の上に差されたままの傘をつきかえした。
その瞬間、腕を掴まれて引き寄せられた。
グイッ。
「ひぁっ・・・?!」
瑞貴先輩の胸に頭をぶつけてしまった。
かなりの衝撃が、瑞貴先輩にいっちゃったような気がする。
「・・・無理、しないで。
俺に出来ることあれば、頼っ
て?」
くっつきすぎな距離を、少し離そうと、後ずさるけど、そんな事は関係なしに長い瑞貴先輩の手が私の頭を撫でた。
ものすごい、優しい手つきで。
「・・・本当、無理はしてないで
す。
そう見えてたなら、すみませ
ん。
・・・では」
やんわりと自然な風に、瑞貴先輩から離れた。
振り返れなかった。
恥ずかしい。
一瞬とは言っても、抱き締めっ・・・///
うあー・・・。
頭が、いっぱいいっぱいだ。
荷物を拾い集めて、傘も差さずに家路についた。
瑞貴先輩って、無口で、無表情なことが多くって、何も考えてないように見えるって、みんなは言うけど。
私は、そうじゃない気がするなぁー。
だって、初めて会った時も、電車で寝てた私を起こしてくれたし。
笑顔もよく見るし。
さっきだって、私なんかの心配までしてくれたし。
その時、いっぱい、喋ってたもの。
そして、最後にはなぐさめに頭まで撫でてくれたし・・・。
カァァァァァ・・・
思い出すと、また体温が上がっていくのを感じた。
当たり前かな。
あんなに格好いい人に、あんな事されたらね。
って事は、私も。
瑞貴先輩を追い回しているような女の子達と、変わらない心なのかなぁ。
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