*第3章*

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すっかり全身は濡れてしまった。 フロントのお姉さんは「大丈夫ですか?」と、すごく心配をしてくれた。 エレベーターに乗って、25階のボタンを押して、着くのを待った。 エレベーターの中では、きらきらと光るシャンデリアを眺めてぼーっとした。 そして、そこから ひなたの茶色ぶちの眼鏡を連想したりする。 今日は疲れた。 なんでだろ。 突き飛ばされて、転んだから? ・・・エリカさんの、本気な気持ちを目の当たりにしちゃったから? 胸の中が、もやもやする。 ぶんぶんと頭を振って、再びきらきら光るシャンデリアを見つめた。 チン。 こういう時は、ひなたと一緒にのんびりするのが1番だ、きっと。 ひなたといると、本当に嫌な事とか、悩みとか、全てを忘れられるんだ。 バッグから鍵を取り出して、早足で歩いた。 この胸のもやもやを、消し去りたい。 やっと自分の部屋のドアの前まで来て、2個ある鍵を開けて玄関へと上がった。 だけど。 あるはずのひなたの靴は無かった。 「・・・ひなた・・・?」 心細くなりながらも、淡い期待を胸にリビングのドアへと急いだ。 ガチャ。 「・・・ひなた、いないの・・・?」 リビングのカーテンは、今朝 私が閉めて行った時のままで、電気もついておらず、部屋は薄暗かった。 ・・・いない。 ひなたがいない・・・。 「・・・雨だから?」 雨で、太陽が出てなくて。 日向ぼっこができないから、ひなたは来てないの・・・? 急に心臓が痛くなった。 胸のもやもやが、大きくなったのを感じた。 「・・・寂しい・・・」 思わず涙が零れてしまった。 誰も見ている人はいないのに、隠すように、声を押し殺して、私はその場にうずくまってしまった。  
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