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カラーン・・・ コローン・・・
「起立、礼」
ガタガタガタッ
4時限目の授業が終わって、昼食の時間となった。
「しぃ、5時限目は家庭科室で
デコレーション技術を学ぶや
つの続きだから、家庭科室で
お弁当にしよう」
可愛らしい、お弁当の入ったミニバッグを持った美凪が近寄ってきた。
「そうだね」
「よーし。
出発しよっか!
・・・千尋?行かないの?」
右手を挙げて、出発進行のポーズをしたまま、美凪はいつも自分の後ろにくっついている桜庭君がいないことに気付いた。
桜庭君は、手に財布を握って、まだ席に着いたままだった。
「千尋?」
「・・・弁当、買い忘れた。
今日は学食に行く・・・」
明らかに元気の無い桜庭君。
目が、可哀相な捨てられた子犬のようになっている。
「可哀相に。
学食は上級生でごったがえし
てるだろうから、居心地悪そ
ー。
ご愁傷様」
「・・・美凪ぃー」
「・・・」
手を静かに合わせる美凪。
さらに可哀相な顔になる桜庭君。
何も言えない私。
「・・・今度から、私がお弁当作
ってきてあげよっか?
千尋の分」
短い沈黙の後に、美凪は多少照れくさそうに言った。
「ま、マジ?」
「大マジ。
いつも作りすぎちゃうから」
「やったぁー!!!!
お願いしますっ!!!!」
桜庭君は、満面の笑みを浮かべた。
それを見て、美凪も小さく笑みをこぼした。
スキップをしながら、食堂へ向かう桜庭君。
・・・美凪って、罪な人だなぁー。
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