*第4章*

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「しぃ、ミートボールちょうだ  い!」 「いいよ」 「美味しいっ」 もぐもぐとミートボールを頬張りながら、笑顔を向ける美凪。 「・・・珍しいね、美凪。  桜庭君に、あんな事言うの」 「そうかなぁー?  あたしはいつでも、あいつに  優しいと思うけど・・・」 眉をしかめて、天を仰ぐ。 「もしかして、桜庭君の事、ち  ょっと意識し始めた?」 「や。  それは無い」 少し意地悪に問いかけるけど、あっさりと即答されてしまった。 本当に、微塵にも桜庭君は恋愛対象の眼中にない、とでもいう感じだ。 「じゃー、なんで?」 「なんとなく?」 とぼけるように美凪は言った。 そして、食べ終えてからっぽになった弁当箱を片付けて、エプロンを取り出した。 「それよりさぁ、見て!これ。  新しいの買ったの!」 「可愛いね、ワンピースみた  い。  ・・・あ」 「どした?」 少し羨ましげに美凪の新しいエプロンを見ていると、ある事に気が付いた。 「・・・エプロン、教室に忘れて  きちゃった・・・」 「うっそ。  それは無いでしょー、家庭科  クラスのトップとして。  良かったね、昼休みが長く  て。  教室、早く行こう?」 美凪が立ち上がり、私にも立つように促した。 「あ、いいよ!  1人で取って来るから」 「あたしを1人にする気?」 恨めしそうな顔をして、私を見る。 「違うよ。  桜庭君が来ても、私も美凪も  いないと困るかなぁ、と思っ  て」 「あー。あいつか。  そんな心配、しなくてもいい  のに」 「そういうわけには、いかない  から。  じゃあ、行ってくるね」 手を振って、家庭科室を出た。   
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