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エレベーターを待っていると、着いたエレベーターから、桜庭君が出てきた。
息を切らしていた。
よっぽど、美凪に早く会いたいんだろう。
「美凪、家庭科室で1人でいる
よ。
今なら、2人きりだね」
小さく小声で言えば、顔を真っ赤にして、桜庭君は大きく咳払いをした。
「・・・プレッシャーをかける
な、春日。
それから・・・」
「それから・・・?」
「帰ってくるのは、ゆっくりで
いいぞ」
にかっと眩しいほどの笑顔で、桜庭君は言った。
・・・遠まわしに『邪魔』ってことですね。
「分かった。
・・・頑張ってね」
「春日っ!
いい奴!!!!」
桜庭君は私の頭をぐしゃっとしてから、美凪のいる家庭科室へダッシュした。
速かった。
「・・・一途だなぁ」
それぞれの恋が、それぞれに動いていく。
エレベーターに乗って、教室のある階へと向かった。
そして、家庭科クラスは校舎とは別の所にあるため、渡り廊下を歩いた。
渡り廊下を歩きながら、外の景色を眺めると、中庭で音楽を聴きながら、ベンチに座っている男子生徒の後姿が見えた。
あ・・・。
無意識にその後姿を見つめていると、強い風が吹いたのか、男子生徒の色素の薄い髪の毛を風が大きく揺らした。
何を思ったのか、その男子生徒は上を見上げた。
そして、ばっちりと私と目が合った。
やっぱり。
振り返ったその人物は、他の誰でもない瑞貴先輩だった。
私を見つけて、イヤホンを片方外して、優しく微笑んだ。
理由は分からないけど、胸がぎゅっとなった。
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