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パクパクと、瑞貴先輩は何かを喋っている感じだったので、私は窓を開けた。
すると、瑞貴先輩はにっこりして、私に向かって手招きをした。
・・・来い、って事かなぁ・・・。
どう解釈したらいいのか、いまいち分からなかったけど、とりあえずエプロンを取ってから中庭のベンチがある所へ向かった。
角を曲がって、瑞貴先輩が座っていたベンチのある場所へと行こうとすると、話し声が聞こえてきた。
「・・・」
「――・・・!」
なんだか、楽しそうな感じだ。
そーっと、角から顔を覗かせて、誰が誰と話をしているのかを伺うと、瑞貴先輩と、いつか私が助けた岡本カナ先輩だった。
カナ先輩は終始笑顔で、だけど、それとは反対に瑞貴先輩は無表情だった。
でも。
なんだか、胸がもやもやする。
一緒にベンチに座っていたカナ先輩が立ち上がり、「ばいばい」と瑞貴先輩に手を振って、校舎へと消えた。
だから、私はもう姿を見せてもいいのに。
瑞貴先輩に、会いたくない気持ちでいっぱいになった。
「はるひ。
いるんなら、出てきて」
私の存在に気付いていた様子の瑞貴先輩が、角の方に目をやって言う。・・・気付いてたんだ・・・。
胸が、さらにもやもやした。
「・・・盗み見とか、そういうん
じゃ・・・」
「分かってるよ。
俺が呼んだから、来てくれた
だけ」
ゆっくりと出てきた私に、瑞貴先輩が優しい眼差しを向ける。
その、カナ先輩と話している時に見せなかった表情を見ると、胸のもやもやが小さくなったのが自分で分かった。
「何か用でしたか?」
「ううん。
ただ、一緒にいたかっただ
け」
さらっと言われた爆弾発言に、思わず顔が熱くなった。
瑞貴先輩が自分の座るベンチの隣をトントンとして、私にも座るように促した。
「・・・じゃあ、5分だけ」
「ここは死角になってるから、
誰にも見られない」
「ダメです」
私が固く拒否をすると、少し寂しそうな顔をする。
そんな表情を見て嬉しくなる私は、意地の悪い性格をしているに違いない。
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