*第4章*

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さっきまでカナ先輩が座っていた場所に腰をかけた。 そして、何を話すでもなく小さな沈黙が数秒続いた。 ・・・き・・・ 気まずい・・・。 「あのっ、瑞貴先輩」 イヤホンをしているから、聞こえにくいかなぁと思って、ちょっとだけ声を張り上げて呼んだ。 でも、意外と普通の声でも声は届くようで、驚いたような仕草を見せて、イヤホンを片方外した。 「・・・先輩は、何の音楽をいつ  も聴いているんですか?」 話しかけておいて、話題を考えていなかった事に気付いたが、とっさに出た質問がそれだった。 「知らない。聴く?」 曲名もアーティストの名前も知らないのか、外した片方のイヤホンを私の耳にはめた。 「あ。Freedomの歌・・・」 「Freedomっていうの」 私も、そんなに歌に関心は無いけど、最近人気が出てきているこのアーティストは知っていた。 「あはは。  これ、Freedomのチェックメ  イトっていう歌ですよ」 笑顔で隣にいる瑞貴先輩の方を見ると、意外と近い距離に驚いた。 そうだ、同じイヤホンで聴いてるから・・・。 そう考えると、急に恥ずかしくなってきた。 「―――っ!!!!///」 体がビクっとなって、大きく揺れた。 ブチッ。 「いた」 私が揺れたため、瑞貴先輩の耳からイヤホンが強引に抜けた。 今、「いた」って言った・・・。 「す、すみません!」 「どうかした?  気分悪い?」 ベンチの端に、急に身を縮めた私を不審に思ったのか、瑞貴先輩が近付こうと距離を縮めてくる。 やばいっ! 心臓が、壊れそう。  
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