*第4章*

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振り返って、まだ座ったままの瑞貴先輩を見た。 ぼんやりと、雲に覆われた空を眺めている。 「・・・じゃあ、瑞貴先輩。  私、次、家庭科室なんで。  行きますね」 「・・・5分、経ってない」 「あは。  5分なんか、とっくに過ぎち  ゃいましたよ。  嘘つきですね」 「・・・笑った」 にっこりと瑞貴先輩は微笑んだ。 「笑った」って。 私、今までどんな顔してた? 「起こして」と、私に手を伸ばす。 少し、気恥ずかしかったけれど、手を差し伸べて瑞貴先輩を立ち上がらせた。 「ありがと」 そう言われて、頭を撫でられた。 少しだけ額をかすめた瑞貴先輩の手は、氷のように冷たかった。 ・・・雨のせい、なんだろうか。 胸に小さな疑惑を抱きながらも、再び高鳴る心臓に戸惑った。 何これ。 「じゃあ、また」 「・・・いってらっしゃい」 「・・・っ」 この感じ。 私は急いで角を曲がり、瑞貴先輩から見えない場所へと隠れた。 この感じ。 ひなたと居る時に感じるやつと同じ・・・? 「・・・それは、無いよね」 締め付けられるような心臓の痛みをなんとか抑えて。 私は、美凪と桜庭君の待つ家庭科室へと足を運んだ。 ・・・もやもやする。 ひなたに、会いたい。 そんな事を考えながら、瑞貴先輩と聴いたFreedomの歌が頭に流れていた。    
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